○竹田 航太 (名古屋大学)
This was supported by RIKEN Junior Research Associate Program and JST SPRING JPMJSP2110.
(T.2025) K. T., Error analysis of the projected PO method with additive inflation for the partially observed Lorenz 96 model, arXiv preprint, https://doi.org/10.48550/arXiv.2507.23199.
限られた情報
「現実」
観測値
観測
モデル
カオス
生成
推定値
データ同化
→ 本講演は時系列推定に焦点を当てる
Observing System Simulation Experiment (OSSE)
まず,データ同化の有効性を検証する標準的な枠組み
を紹介.
仮想的な真の状態を作って状態推定精度を評価.
双子実験とも呼ばれる.
Observing System Simulation Experiment (OSSE)
(1) モデルから真の時系列を 生成
Observing System Simulation Experiment (OSSE)
(2) 観測値 を生成
(1) モデルから真の時系列を 生成
Observing System Simulation Experiment (OSSE)
(3) 観測値 を同化し解析値(推定値) を計算
データ同化アルゴリズム
(2) 観測値 を生成
(1) モデルから真の時系列を 生成
Observing System Simulation Experiment (OSSE)
(4) 真値 と解析値 の差 を計算
(3) 観測値 を同化し解析値(推定値) を計算
(2) 観測値 を生成
(1) モデルから真の時系列を 生成
EnKF
同期
フィルタ
3DVar
連続時間
離散時間
ノイズあり
ノイズなし
時間依存重み
固定重み
重み 1
時系列データ同化 → 時系列観測を予測値に重みつきで混ぜる.
ある観点からは...
同期
フィルタ
観測頻度
観測ノイズ
定式化とアルゴリズム
逆問題における正則化パラメータに対応
ノイズ強度に応じて重みを調整
重要
・・・4つをこれから説明
①
②
③
④
基本はこれを
解析したい
「現実」
観測値
観測
モデル
カオス
生成
EnKFに対し,Filter accuracyを示した.(T.+2024)
推定誤差
推定値
データ同化
EnKF
Filter accuracy
観測誤差
離散時間ノイズあり
限られた情報
「現実」
観測値
観測
モデル
カオス
生成
EnKFに対し,Filter accuracyを示した.(T.+2024)
推定値
データ同化
EnKF
Filter accuracy
仮定:離散化誤差なし
定式化やアルゴリズムが様々
この目標で精度が保証されるか?
仮定:
推定誤差
観測誤差
限られた情報
観測値
モデル
EnKFに対し,Filter accuracyを示した.(T.+2024)
仮定:離散化誤差なし
仮定:
Filter accuracy
誤差解析
推定誤差
観測誤差
この目標で精度が保証されるか?
→ C < 1を示せるか?位相が改善するか?
データ同化
EnKFアルゴリズム
定式化やアルゴリズムが様々
確率微分方程式,偏微分方程式,離散時間力学系...
それぞれで似たアルゴリズムが解析されている
観測値
モデル
EnKFに対し,Filter accuracyを示した.(T.+2024)
仮定:離散化誤差なし
仮定:
Filter accuracy
誤差解析
推定誤差
観測誤差
この目標で精度が保証されるか?
→ C < 1を示せるか?位相が改善するか?
データ同化
EnKFアルゴリズム
定式化やアルゴリズムが様々
確率微分方程式,偏微分方程式,離散時間力学系...
それぞれで似たアルゴリズムが解析されている
1. 観測条件の緩和
2. アルゴリズム間の関係
3. 離散化誤差の考慮
本講演
1. 「偏微分方程式的」ノイズなし定式化 (Azouani+2014)
2. 2D Navier-Stokes + EnKF (Biswas+2024arXiv)
3. Lorenz 96 + EnKF (T.2025arXiv)
問い
追跡可能
追跡不可能
この間は
どうなっているか?
結果 部分観測下での追跡可能性(filter accuracy)
ノイズありかつ複雑なアルゴリズムでも「追跡可能」を証明.
これはどの定式化にも共通する問い
①
④
④'
(連続時間)同期フィルタ
真の時系列
観測
データ同化アルゴリズム
→ 推定値
射影
観測空間
部分等長
観測間隔
連続時間ノイズなし
Hilbert空間 上の発展方程式
観測空間で常に同期
(Law+2016)
有界線形
観測空間
未観測空間
Lorenz 96 (L96)
非線形・エネルギー保存
線形・散逸
外力
地球の等緯度常に分布する物理量のカオスな変動を模した現象論的モデル.
(Lorenz1996)(Lorenz+1998)
※ 実数の絶対値とベクトルのユークリッドノルムの両方に
を用いる.
L96モデルに対して,以下の部分観測を考える.
イラスト
○
○
×
○
○
×
○
○
×
○
○
×
○: 観測
×: 観測しない
に対し
とする.
ただし,
は標準基底である.
時空間プロット
定理
(Theorem4.5 in Law+2016の改変)
注意
方程式と観測の組み合わせが重要.
収束レート:
観測行列は外力に依存しない.
: Lorenz 96モデルの真の軌道
: 観測行列 と連続時間同期フィルタによる推定値
このとき,任意の初期推定値 について
※ 実数の絶対値とベクトルのユークリッドノルムの両方に
を用いる.
+いくつかの仮定
任意の で2/3観測 で十分.
EnKF (Ensemble Kalman filter)
真の時系列
データ同化アルゴリズム
→ 推定値
Hilbert空間 上の発展方程式
観測空間
観測
部分等長
観測間隔
離散時間ノイズあり
(Burgers+1998)
個の推定サンプル
①ランダムノイズ
②有界ノイズ
EnKF (Ensemble Kalman filter)
データ同化アルゴリズム
→ 推定値
観測間隔
離散時間ノイズあり
(Burgers+1998)
個の推定サンプル
重みは共分散 に依存.
チューニングパラメータ
で正則化
時間依存する重み.サンプル共分散から決定.
注意
定理1
(Theorem 3.1 in T.2025arXivの改変)
注意
方程式と観測の組み合わせが重要.
+いくつかの仮定
: Lorenz 96モデルの真の軌道(離散時間)
パラメータ で重みを制御 → 推定を観測に近づける.
(Filter accuracy)
: EnKFによる推定値
: ノイズあり部分観測
このとき, について,
(T.2025arXiv)
似た結果は(SanzAlonso+2025)(Biswas+2024arXiv).
は観測ノイズについての期待値
観測条件の緩和(定理1)では,ノイズなし下での評価を応用.
問い:一般にできるか?
どう定式化されるか?
EnKFの や を制御して,連続時間同期フィルタに近い状況を再現.
EnKF
同期
フィルタ
3DVar
連続時間
離散時間
ノイズあり
ノイズなし
時間依存重み
固定重み
重み 1
同期
フィルタ
観測頻度
観測ノイズ
✓
✓
①
②
③
④
基本はこれを
解析したい
観測空間
(離散時間)同期フィルタ
真の時系列
観測
データ同化アルゴリズム
部分等長
→ 推定値
射影
観測間隔
離散時間ノイズなし
Hilbert空間 上の発展方程式
離散時間で同期(不連続)
解作用素
( 時間発展)
※ノイズあり観測にも適用可能
観測空間
未観測空間
(離散時間)同期フィルタ
データ同化アルゴリズム
→ 推定値
射影
観測間隔
離散時間ノイズなし
離散時間で同期(不連続)
※ノイズあり観測にも適用可能
観測空間
未観測空間
このように書ける.
3次元変分法(3DVar)
データ同化アルゴリズム
推定値
観測空間
観測
部分等長
観測間隔
離散時間ノイズあり
真の時系列
Hilbert空間 上の発展方程式
解作用素
( 時間発展)
重みは共分散 に依存.
チューニングパラメータ
①ランダムノイズ
②有界ノイズ
3次元変分法(3DVar)
データ同化アルゴリズム
推定値
観測間隔
離散時間ノイズあり
チューニングパラメータ
重みは共分散 に依存.
※一般には正定値行列
時間依存しない重み.同期フィルタを「正則化」したような形.
注意
同期フィルタ!
定義
が離散時間フィルタであるとは
を満たすことをいう.
連続関数
注意
推定値 と観測 から次の推定値 を与える.
同じ観測で更新すると異なる推定値が近づく.
(離散時間フィルタの更新写像)
は のノルム.
定理2
(T.)
このとき,
仮定:あるコンパクト集合 について
近似
(2)
(1)
: 別の離散時間フィルタによる推定値
: ある離散時間フィルタによる推定値
:観測列
は のノルム.
注意
証明はフィルタの縮小性と仮定(1)による.
系1
(T.)
注意
3DVar → 同期フィルタ
:Lorenz 96モデルに対する有界ノイズありの観測
: 同期フィルタによる推定値
Lorenz96モデルに同期フィルタと3DVarを適用.
: 3DVarによる推定値
EnKF → 3DVarの近似もできそう.
より単純なアルゴリズムでの解析に帰着できる.
誤差
観測ノイズ
のレベル
紹介した理論は
この状況を解析
応用上は
この辺りが重要
パラメータ とEnKFの誤差の関係について(現状の理解)
より単純なアルゴリズムに近づけるため,
応用上重要な状況の解析にはなっていない可能性がある.
これまでの議論では,モデルの時間発展 が厳密に解けることを前提にしていた.
→ 基本的にモデルはわからない.数値計算上は離散化誤差などが含まれる.
c. 観測誤差に含めるという考えもある.
a. SDEでモデルノイズとして考慮(よくある.)
b. Surrogate modelとして考慮(SanzAlonso+2025)
対応
これに注目
→これと同じ方針
観測空間
(離散時間)同期フィルタ
真の時系列
観測
データ同化アルゴリズム
有界線形
→ 推定値
射影
観測間隔
離散時間ノイズなし
Hilbert空間 上の発展方程式
離散時間で同期(不連続)
解作用素
( 時間発展)
Δtで時間離散化
Δtで時間離散化
定理
(T.)
注意
仮定
離散化誤差
時間離散化に限定
このとき,
未観測空間での縮小性
Lorenz 96モデルは仮定1を満たす.
適当な数値積分スキーム仮定2が成り立つ
(1)
(2)
時系列データ同化 → 時系列観測を予測値に重みつきで混ぜる.
ある観点からは...
定理1(部分観測でFilter accuracy)
定理2 & 系1
定理3(離散化誤差評価)
同期
フィルタ
3DVar
連続時間
離散時間
ノイズなし
固定重み
重み 1
同期
フィルタ
観測頻度
観測ノイズ
EnKF
時間依存重み
ノイズあり
①
②
③
④
基本はこれを
解析したい
結果1(部分観測とFilter accuracy)
結果2(アルゴリズム間の関係)
定理2により,定理1の別証明ができるかも.
系1
3DVar
同期フィルタ
EnKF
TODO
結果3(モデル誤差の考慮)
定理3について数値実験で検証する.
(SanzAlonso+2025)は一般のSurrogateモデルについて評価.
→ 機械学習モデルの事後誤差評価があれば数値検証できる.
定理1において,位相の改善等について議論.
②
③
④
(de Wiljes+2018) J. de Wiljes, S. Reich, and W. Stannat (2018), Long-Time Stability and Accuracy of the Ensemble Kalman-Bucy Filter for Fully Observed Processes and Small Measurement Noise, Siam J. Appl. Dyn. Syst., 17, pp. 1152–1181.
(Burgers+1998) G. Burgers, P. J. van Leeuwen, and G. Evensen (1998), Analysis Scheme in the Ensemble Kalman Filter, Mon. Weather Rev., 126, 1719–1724.
(Bishop+2001) C. H. Bishop, B. J. Etherton, and S. J. Majumdar (2001), Adaptive Sampling with the Ensemble Transform Kalman Filter. Part I: Theoretical Aspects, Mon. Weather Rev., 129, 420–436.
(Anderson 2001) J. L. Anderson (2001), An Ensemble Adjustment Kalman Filter for Data Assimilation, Mon. Weather Rev., 129, 2884–2903.
(Dieci+1999) L. Dieci and T. Eirola (1999), On smooth decompositions of matrices, Siam J. Matrix Anal. Appl., 20, pp. 800–819.
(Reich+2015) S. Reich and C. Cotter (2015), Probabilistic Forecasting and Bayesian Data Assimilation, Cambridge University Press, Cambridge.
(Law+2015) K. J. H. Law, A. M. Stuart, and K. C. Zygalakis (2015), Data Assimilation: A Mathematical Introduction, Springer.
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(Azouani+2014) A. Azouani, E. Olson, and E. S. Titi, Continuous Data Assimilation Using General Interpolant Observables, J. Nonlinear Sci., 24, 277–304.
(Hayden+2011) K. Hayden, E. Olson, and E. S. Titi, Discrete data assimilation in the Lorenz and 2D Navier-Stokes equations, Phys. -Nonlinear Phenom., 240, pp. 1416– 1425.
(Sanz-Alonso+2025), Sanz-Alonso, D., Waniorek, N., 2025. Long-Time Accuracy of Ensemble Kalman Filters for Chaotic Dynamical Systems and Machine-Learned Dynamical Systems. SIAM J. Appl. Dyn. Syst. 2246–2286. https://doi.org/10.1137/24M1719232.
(Biswas+2024), https://arxiv.org/abs/2402.14078.
(T.2025) K. T., Error analysis of the projected PO method with additive inflation for the partially observed Lorenz 96 model, arXiv preprint, https://doi.org/10.48550/arXiv.2507.23199.