弥生株式会社

黒曜
(@kokuyouwind)

$ whoami

  • 黒曜

  • @kokuyouwind

  • Misoca → 弥生株式会社 (We're Hiring!)

  • 一応Railsエンジニア

  • 最近はAWSとかDocker周りを
    弄っていることが多い

Railsは便利!

🤔

「どうして」便利なんだろう……?

「いい感じ」に書ける!

「いい感じ」に書ける!

人間の「意図」を

表現しやすい

例えば……

Event.find_by(name: 'Kaigi on Rails')
  .sessions
  .find_or_create_by(speaker: 'kokuyouwind')
  .update(start_time: '10:50')

例えば……

イベントの中から「Kaigi on Rails」を探して、

発表者がkokuyouwindのセッションを見つける。

(存在しない場合は作る)

そして、セッション開始時刻を10:50に更新する。

Event.find_by(name: 'Kaigi on Rails')
  .sessions
  .find_or_create_by(speaker: 'kokuyouwind')
  .update(start_time: '10:50')

人間の「意図」

表現しやすい

実際の挙動は?

どんなクエリが、合計何回実行される?
イベントやセッションがたくさんあっても大丈夫?

Event.find_by(name: 'Kaigi on Rails')
  .sessions
  .find_or_create_by(speaker: 'kokuyouwind')
  .update(start_time: '10:50')

細かい「挙動」は

把握しづらいことがある

細かい挙動が把握しづらいと……

  • それ自体は悪いことではない

    • 低レベルの挙動は抽象化されていたほうが、
      ​高レベルの意図を理解しやすい

  • 気をつけないと、効率の悪い処理になる場合がある

    • DB処理は ActiveRecord -> SQL -> 実行計画と
      2段階に翻訳されるので、より把握しづらい

    • パフォーマンス悪化や、最悪応答不能になることも

パフォーマンスの計測・改善をしよう!

アジェンダ

  • パフォーマンスの計測

  • DB処理のチューニング

  • CPU処理のチューニング

  • ケーススタディ

  • まとめ

アジェンダ

  • パフォーマンスの計測

  • DB処理のチューニング

  • CPU処理のチューニング

  • ケーススタディ

  • まとめ

パフォーマンスを改善するには
問題がどこにあるか
分析する必要がある

パフォーマンスに影響を与える要素

  • CPU

    • フロントエンド

    • サーバサイド

  • 入出力

    • データベース

    • ファイル

    • ネットワーク

パフォーマンスに影響を与える要素

  • CPU

    • フロントエンド

    • サーバサイド

  • 入出力

    • データベース ← だいたいここが問題

    • ファイル

    • ネットワーク

APM
(Application Monitoring Management)

APMツールでわかること

どのエンドポイントが重いか

APMツールでわかること

どの処理やクエリに時間がかかっているか

とりあえず好きなAPMツールを

導入するのがオススメ
(定期的に見よう!)

アジェンダ

  • パフォーマンスの計測

  • DB処理のチューニング

  • CPU処理のチューニング

  • ケーススタディ

  • まとめ

重いクエリの要因は色々あるが、
特に重くなりやすい3つを取り上げる

重いクエリ三銃士

N+1

FULL
SCAN

Filesort

MySQLの気持ちになって

考えてみよう

※ MySQL以外を使ってる人は「XXX(任意のRDBMS)の気持ちになって」と読み替えてください

FULL SCAN(テーブルフルスキャン)

N+1

FULL
SCAN

Filesort

FULL SCANの例

id speaker start_time end_time
1 tenderlove 10:10 10:40
2 kokuyouwind 10:50 11:10
3 toshimaru  11:10 11:30
4 lulalala 11:30 11:40
5 beta_chelsea 12:40 12:50
6 makicamel 12:50 13:10

sessions

FULL SCANの例

ジョーカー(joker1007)さん
セッション開始時刻はいつ?

SELECT start_time
FROM sessions
WHERE speaker = "joker1007";
Sessions.find_by(speaker: 'joker1007')
  .pluck(:start_time)

FULL SCANの例

id speaker start_time end_time
1 tenderlove 10:10 10:40
2 kokuyouwind 10:50 11:10
3 toshimaru  11:10 11:30
4 lulalala 11:30 11:40
5 beta_chelsea 12:40 12:50
6 makicamel 12:50 13:10

発表者名を順に全部見る(テーブルフルスキャン)

100万件あったら
100万件全部読む(かもしれない)

インデックスをつけよう

インデックスのイメージ

索引 speaker id
b beta_chelsea 5
f fukajun 11
j joker1007 17
k koic 16
kokuyouwind 2
l lulalala 4

index(speaker on sessions)

インデックスのイメージ

索引 speaker id
b beta_chelsea 5
f fukajun 11
j joker1007 17
k koic 16
kokuyouwind 2
l lulalala 4

jから始まるspeakerを一発で見つける

インデックスのイメージ

索引 speaker id
j joker1007 17

IDからレコードを見つけてstart_timeを見つける

id speaker start_time end_time
16 koic 16:20 16:40
17 joker1007 16:40 17:00
18 a_matsuda 17:10 17:40

FULL SCANしなくなった

Filesort

N+1

FULL
SCAN

Filesort

Filesortの例

id event_id speaker start_time end_time
1 1 tenderlove 11:45 12:10
2 2 tenderlove 10:10 10:40
3 2 koic 16:20 16:40
4 1 koic 14:00 14:25
5 2 kokuyouwind 10:50 11:10
id name
1 RubyKaigi Takeout 2020
2 Kaigi on Rails

events

sessions

Filesortの例

Kaigi on Railsのセッションを
開始時刻順で教えて?

SELECT * FROM events
WHERE name = 'Kaigi on Rails';

SELECT * FROM sessions
WHERE event_id = 2
ORDER BY start_time ASC;
Events.find_by(name: 'Kaigi on Rails')
  .sessions.order(:start_time)

Filesortの例

索引 event_id id
1 1 1
1 4
2 2 2
2 3
2 5
id name
1 RubyKaigi Takeout 2020
2 Kaigi on Rails

events

index
(event_id on
sessions)

Filesortの例

id event_id speaker start_time end_time
2 2 tenderlove 10:10 10:40
3 2 koic 16:20 16:40
5 2 kokuyouwind 10:50 11:10

sessions

index
(event_id on sessions)

索引 event_id id
2 2 2
2 3
2 5

順に並んでいない!

Filesortの例

id speaker start_time end_time
2 tenderlove 10:10 10:40
3 koic 16:20 16:40
5 kokuyouwind 10:50 11:10
id speaker start_time end_time
2 tenderlove 10:10 10:40
5 kokuyouwind 10:50 11:10
3 koic 16:20 16:40

見つけたレコードをstart_time順に
メモリ上で並べ替える!
(Filesort)

LIMITで件数を制限しても、
全件(100万件かも)を読み込んで
並び替えないと返せない

処理順に合わせて
複合インデックスをつけよう

複合インデックスの例

索引 event_id start_time id
(1, 11) 1 11:45 1
(1, 14) 1 14:00 4
(2, 10) 2 10:10 2
2 10:50 5
(2, 16) 2 16:20 3

index (event_id, start_time on sessions)

event_idとstart_timeを
組み合わせた索引

複合インデックスの例

索引 event_id start_time id
(2, 10) 2 10:10 2
2 10:50 5
(2, 16) 2 16:20 3

index
(event_id, start_time on sessions)

id speaker start_time end_time
2 tenderlove 10:10 10:40
5 kokuyouwind 10:50 11:10
3 koic 16:20 16:40

sessions

start_timeでソート済みの状態で取れる!

filesortしなくなった

複合インデックス(悪い例)

索引 start_time event_id id
(10, 2) ​10:10 2 1
​10:50 2 4
(11, 1) ​11:45 1 2
(14, 1) ​14:00 1 5
(16, 2) 16:20 2 3

index (start_time, event_id on sessions)

start_timeが先だと、
event_id=2を索引から探せない!

複合インデックス(悪い例)

索引 start_time speaker id
(10:10, t) 10:10 tenderlove 1
(10:50, k) 10:50 kokuyouwind 2
(11:10, t) 11:10 toshimaru 3
(11:30, l) 11:30 lulalala 4

index (start_time, speaker on sessions)

start_timeだけで昇順に並ぶため、speakerはソートされない
必要ならam/pm区分カラムなどを作る必要がある

Sessions.where(start_time: '0:00'..'12:00')
  .order_by(:speaker)

N+1クエリ

N+1

FULL
SCAN

Filesort

N+1クエリの例

イベントごとに、イベント名と
セッションの発表者を表示して?

SELECT * FROM events;

SELECT * FROM sessions WHERE event_id = 1;
SELECT * FROM sessions WHERE event_id = 2;
Events.each do |event|
  p event.name
  event.sessions.each { p _1.speaker }
end

N+1クエリの例

イベントが100個あると…

SELECT * FROM events;
-- => 100個のイベント

SELECT * FROM sessions WHERE event_id = 1;
SELECT * FROM sessions WHERE event_id = 2;
SELECT * FROM sessions WHERE event_id = 3;
-- ...
SELECT * FROM sessions WHERE event_id = 99;
SELECT * FROM sessions WHERE event_id = 100;

SQLクエリを繰り返し大量に発行する

死…ぬほどではないけど
めっちゃ重い

includesをつかおう

includesの例

SELECT * FROM events;
-- => 100個のイベント

SELECT * FROM sessions WHERE event_id IN (1, 2, ..., 100);
Events.includes(:sessions).each do |event|
  p event.name
  event.sessions.each { p _1.speaker }
end

クエリ2回で完了!

N+1クエリしなくなった

問題の見極め方

APMなどで時間のかかっているクエリを特定する

問題の見極め方

1クエリで時間がかかっている場合、EXPLAINを見る

typeに "ALL" や "index" がいたらFULL SCAN

typeがrefなどで、keyが使われてればOK!

問題の見極め方

extrasに "Using filesort" がいたらFilesort

"Using filesort"が消えればOK!

1クエリで時間がかかっている場合、EXPLAINを見る

問題の見極め方

APMで同じクエリが何回も流れていたらN+1クエリを疑う

NewRelicは
呼び出し回数を教えてくれる

Skylightは
マークを付けてくれる

アジェンダ

  • パフォーマンスの計測

  • DB処理のチューニング

  • CPU処理のチューニング

  • ケーススタディ

  • まとめ

CPU処理のチューニング

  • 「単独で重い処理」はそんなに多くない

  • 軽い処理でも繰り返し回数が多いと重くなる

    • 以下のコードはA, Bがそれぞれ1,000件の配列だと
      member?内の比較処理を1,000,000回呼び出す

    • (比較処理が1ナノ秒の処理でも1秒かかる)

A.filter { B.member?(_1) }

対策1: データ構造とアルゴリズムの見直し

  • Arrayは全件探索になりやすいデータ構造

    • 「キーから値を探す」ならHash

    • 「共通部分や差分を取る」ならSet

    • RDBやRedisなどのミドルウェア側で処理する手も

  • アルゴリズムを見直すことで効率が良くなる可能性

    • 一般的なアルゴリズムを調べる

    • ループを早く打ち切れるように処理順を変える

対策2: メモ化・キャッシュを利用する

  • 同じ処理が何度も行われる場合に効果的

    • リクエストごとで十分ならメモ化

    • リクエストを跨いで保持したいならRailsキャッシュ

  • 根本的解決ではないため注意が必要

    • 初回処理時は重い(必要ならキャッシュを温める)

    • 古いキャッシュがバグを起こすこともあるので
      キャッシュキーの選定には熟慮が必要

アジェンダ

  • パフォーマンスの計測

  • DB処理のチューニング

  • CPU処理のチューニング

  • ケーススタディ

  • まとめ

ケース1: 関連文書の取得

請求書から、関連文書

(変換した・された見積書・納品書)を取る際に

N+1が発生していた

ケース1: 関連文書の取得

任意の2要素に関連を持たせるため、
クラス名とIDから自力でLookupしていた

FromType FromID ToType ToID
Estimate 1 Invoice 1
Invoice 1 DeliverySlip 1
Invoice 1 DeliverySlip 2
def converted_docs
  DocumentConversion
    .find_by(from_type: 'Invoice', from_id: id)
    .map do |doc|
      doc.to_type.constantize.find(doc.to_id)
    end
end

ケース1: 関連文書の取得

ポリモーフィック関連付けに書き換え、
includesを指定できるようにした

class Invoice
  has_many :document_conversions, as: :source_document
  has_many :converted_delivery_slips, 
      through: :document_conversions,
      source: :converted_document,
      source_type: 'DeliverySlip'
end

# usage
Invoice.all.includes(:converted_delivery_slips)

ケース2: PDF変換

gemを更新したら
PDF生成処理が急に重くなった

ケース2: PDF変換

stackprofを使って調査した結果、gem内から
CompareWithRange#cover?が大量に呼ばれていた

ケース2: PDF変換

def group_original_code_points_by_bit(os2)
  Hash.new { |h, k| h[k] = [] }.tap do |result|
    os2.file.cmap.unicode.first.code_map.each_key do |code_point|

      # === ↓2重ループ内で cover? を呼んでいる!!! ===
      range = UNICODE_RANGES.find { |r| r.cover?(code_point) }

      # ...

ケース2: PDF変換

アルゴリズムを変えて、

cover?の呼び出しを減らすPull Requestを送った

アジェンダ

  • パフォーマンスの計測

  • DB処理のチューニング

  • CPU処理のチューニング

  • ケーススタディ

  • まとめ

まとめ

  • パフォーマンス改善には、まず計測から

    • とりあえずAPMツールを入れて、定期的に見よう

  • 重いDBクエリはEXPLAINしてインデックスを貼ろう

    • FULL SCANやfilesortは重いので倒そう

    • 複合インデックスは効き方を想像して貼ろう

  • N+1クエリが発生しないようincludesしよう

  • CPU処理の問題は、プロファイラで根本原因を調査しよう

    • データ構造やアルゴリズムを見直せないか考えよう

Railsパフォーマンス・チューニング入門

By 黒曜

Railsパフォーマンス・チューニング入門

Kaigi on Railsの発表資料です https://kaigionrails.org/

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